台湾の複数メディアが、日本と台湾の関係をめぐる一連の報道を伝えている。外交部長が日本への入国を拒否され東京の空港で夜を明かした、総統の直筆書簡が日本側から黙殺された——これらの内容は2026年7月上旬に相次いで報じられたもので、当事者である台湾外交部は否定のコメントを出している。
中評社の報道(2026年7月8日)
台湾のニュースサイト「中評社」は、外交部長・林佳龍氏が今年4月、マーシャル諸島訪問の折に日本への立ち寄りを希望したが入国を拒否され、東京の空港で夜を明かす事態があったと報じた。背景にあるとされるのは、3月に行政院長・卓栄泰氏がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)観戦で目立ちすぎたことへの、日本側の反発だという。
同記事は、台湾のニュースサイト「風傳媒」が「民進党派閥の暗闘が激化し、政権の亀裂が表面化」と題する記事を掲載したことを引用し、こうした経緯を紹介した。それによれば、5月下旬には頼清徳総統が自ら日本の高市早苗首相に書簡を送り関係修復を試みたが、日本側から前向きな反応は得られなかった。さらに、日本の外務省がWBCの一件を踏まえ、日本台湾交流協会の高羽陽・副代表に対し、7月中旬を期限に台湾からの離任を求めた、とも伝えている。ただし中評社自身は、これらの内容が匿名の投書やネット上の未確認情報を引用したものであり、一次情報として確認されたものではないと位置づけている。
中時新聞網の論評(2026年7月7日・快評)
「中時新聞網」の論評は、別のメディアがネット掲示板(PTT)の投稿を引用して報じた内容として、卓栄泰氏のWBC観戦の際に日本の高市早苗首相との「偶然の出会い」が当初周到に計画されていたが破談になった、と紹介する。その後、頼清徳総統が関係修復のために送った直筆書簡も、立て続けに日本側から無視されていると論じ、外交部長・林佳龍氏が入国を拒否され東京の空港に留まらざるを得なかった状況を「非対等で尊厳のない」ものだったと評している。
同論評はまた、2025年6月1日に民進党の郭国文立法委員が安倍晋三元首相の甥にあたる岸信千世衆議院議員を訪問したとする報道にも触れている。郭国文氏は自身のSNS上で頼清徳総統の直筆書簡を披露し、頼総統と安倍家との関係の深さを示す狙いから、岸信千世氏にその父親である元防衛大臣の岸信夫氏へ手渡すよう依頼したという。しかし、その後も一族の訪台は実現していない。
行政院長・卓栄泰氏による「野球外交」が過度に目立つ形で演出された背景には、「謝派」が前駐日代表の謝長廷氏の献策によりこれを主導したとの見方も示す。
5月末には台湾東部海域の排他的経済水域(EEZ)をめぐる交渉で台湾側の主張が退けられたとされる件にも言及し、台湾の漁業者への影響を指摘している。
こうした経緯を踏まえ、同論評は日台関係が「50年で最悪の後退」に至ったと論じ、2026年の地方選挙が頼総統にとっての「中間テスト」になるとの見方を示している。
台湾外交部の反応
これらの報道に対し、台湾の外交部はコメントを発表している。「裏付けのない憶測や匿名の情報源を引用している」として否定し、個別の未確認情報にはコメントしないとしたうえで、台湾と日本は自由・民主主義・人権・法の支配といった基本的価値を共有する「重要なパートナーであり貴重な友人」であり、緊密な経済・貿易関係と人的往来を有していると述べた。双方の意思疎通のルートは「常に円滑だ」としたうえで、既存の基礎の上に立ち、引き続き実務的に日台関係を深めていく考えを示している。
なお、これらの報道の一部は、投書やインターネット上の情報を引用する形で構成されている。